公務員の副業がいよいよ解禁へ!現状と今後
これまで厳しく副業が制限されていた公務員ですが、副業解禁への機運が高まっています。
実際に解禁されている自治体の事例や、今後の見通しについて見ていきましょう。
副業解禁の波は公務員にも訪れている
2017年に政府が打ち出した働き方改革において、多様な働き方のひとつとして副業・兼業を促進していくことが決定されました。
その翌年の2018年には、モデル就業規則に記載されていた「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと。」という一文が消され、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。」とされるなど、国を挙げて副業・兼業を促す流れになっています。
また、2018年に閣議決定された「未来投資戦略2018」において国家公務員が「公益的活動等を行うための兼業」の環境整備をすることも明記されました。
あくまでも社会貢献のひとつとしてではあるものの、国家公務員も地方公務員も副業・兼業の促進が図られ始めています。
地方公務員の副業解禁の現状
実際のところ、どの程度公務員の副業解禁は進んでいるのでしょうか。
2019年、総務省は「地方公務員の社会貢献活動に関する兼業について」として地方公務員の副業・兼業の実態について調査を行いました。
その中で、より副業しやすくするために許可基準を設定している自治体は、約4割程度と全体の半数にも満たしていません。
そのため、どの程度の副業が可能なのか判断することが個人には難しく、本来なら問題が無い内容の副業であっても違反を恐れて抑制されている可能性があることを調査で結論付けました。
しかし、独自に許可制度を設けて副業を促進している自治体もあります。
その自治体の取り組み事例を2つ紹介していきます。
事例1「神戸市の地域貢献応援制度」
神戸市では働き方改革のひとつとして、平成29年から「地域貢献応援制度」を導入しています。
これは、市の職員が勤務時間外に社会性や公益性の高い継続的な地域貢献活動をする場合において、報酬を得て従事することを許可するための取り扱いについて定めたものです。
許可が得られれば、営利企業への従事等も可能になります。
制度制定の背景には、阪神大震災から復興を担ってきた地元NPO団体の人手不足や高齢化があります。
公務員として得た知識を地域に、また地域貢献で得た経験を職務に活かすwin-winのサイクルを作ることがねらいと定められています。
ただし、制度上の許可を得るためには在職6カ月以上、勤務成績が良好であることなどの要件をクリアする必要があります。
平成30年度末までの時点で、制度の利用者は累計9件にのぼったそうです。
事例2「生駒市の地域貢献活動を行う職員の副業促進」
生駒市も神戸市をモデルケースとして、平成29年から職務外にて地域活動などに従事し報酬を得る際の基準を制定、運用しています。
神戸市と同様、職員が地域貢献することによってまちづくりがより活発化されることがねらいです。
従事する仕事には公益性の高さや継続性、市の発展への寄与などが求められ、報告書の提出が義務付けられています。
実際に制度を利用している例として、地域のサッカーやバレーボールの指導者、NPO法人への参加があり、制度導入後最初の半年だけでも5件の承認事例があるそうです。
国家公務員の副業解禁の現状
ここまで、地方公務員の副業解禁について紹介してきましたが、国家公務員の副業解禁の現状はどうなっているのでしょうか。
先述の「未来投資戦略2018」を受け、内閣人事局が平成31年3月に「国家公務員の兼業について」を公表しました。
それまでは昭和41年に定められた許可基準で運用されていましたが、これは公益性のある兼業(副業)を促すための環境整備として、時代に合わせた許可基準を明確に定めたものです。
2019年10月には国家公務員で初のNPO兼業者が誕生しています。
他にも公益性のある兼業(副業)を行いたいと考えている国家公務員のために、人材を求めるNPO法人とのマッチングの場が設けられるなど、少しずつではありますが国家公務員の副業の裾野も広がっています。
公務員の副業解禁のこれから
今後は国家公務員も地方公務員も、副業の許可基準が明確化されていくことで徐々にではありますが副業を行う人が増えるとみられています。
特に、少子高齢化の波が訪れている地方公務員のほうが解禁の波は大きいようです。
地方公務員の副業許可制度の先駆けとなった神戸市や生駒市には、全国の自治体から同制度に対して多数の問い合わせが寄せられました。
視察に訪れている自治体もあることから、今後も地方自治体を中心に副業する公務員は増えると思われます。
また、制度を活用し、副業を前提として地方自治体の仕事を行う民間人材を採用している自治体も増えています。
しかし、どれも公益性のある社会貢献活動に限られており、単純な収入アップを目的とする副業の全面解禁は難しいでしょう。
そもそもなぜ公務員は副業をしてはいけないの?
ここまで公務員の副業解禁の現状について見てきましたが、そもそもなぜ公務員は副業をしてはいけないのでしょうか。
その理由と、もし違反してしまった場合にどのような処罰を受けるのかを解説します。
【公務員は副業をしてはいけない理由3つ】
- 法律で制限されている
- 公務員の原則・義務から外れてしまう
- 禁止されている副業をした場合処分される
法律で制限されている
公務員が副業をしてはいけない理由のひとつに、法律による制限があります。
国家公務員の場合は国家公務員法第103条と104条において、地方公務員の場合は地方公務員法第38条において、兼業が制限されています。
103条の定める兼業とは、報酬の有無に関わらず営利企業の取締役などの役員を務める「役員兼業」と、商業・工業問わず自身で企業を運営する「自営兼業」のことであり、104条では、許可なくして報酬を得て役員以外の役職で営利企業に勤める兼業が制限されているのです。
地方公務員法においても、任命権者(県知事や市長など)の許可なく、公務員同様の営利企業の役員になる役員兼業、自身で営利企業を営む自営兼業、報酬を得て事業に従事することをしてはならないと記載されています。
このように、公務員は法律によって何らかの形で営利活動を行ったり関わること自体が制限されているのです。
公務員の原則・義務から外れてしまう
公務員が副業をしてはいけないもうひとつの理由として、副業をすることが公務員の原則・義務から外れてしまうことがあります。
国家公務員法において、公務員は「国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当っては、全力を挙げてこれに専念しなければならない」と定められています。
このことにより、副業を行うことで公務員としての信用を失ったり(国家公務員法第99条「信用失墜行為の禁止」)、個人情報の守秘義務に違反する恐れがあったり(国家公務員法第100条「秘密を守る義務」違反)、職務に専念できなくなる(国家公務員法大101条「職務専念義務」違反)と考えられているのです。
禁止されている副業をした場合処分される
もし、公務員が制限されている範囲を越えた副業を行った場合、「免職」「停職」「減給」「戒告」のいずれかの懲戒処分が下されます。
懲戒処分に至らない場合でも、訓告や厳重注意を受けることも。
また、どのような内容であっても処分を受けた場合、給与そのものへの影響だけではなく、期末等手当や昇進への影響も考えられてしまうのです。
過去の事例の中で具体的に見てみると、「許可なく勤務時間外に飲食店でアルバイトを行い報酬を得ていた」という事例や「名義貸しを行い取締役に就任していた」事例で減給処分となっています。
公務員に出来る副業ってどんなもの?
行える副業に大きな制限が付いている公務員ですが、どのような副業なら許可されているのでしょうか。
国家公務員の服務規定を定めた令和2年3月人事院発行の「義務違反防止ハンドブック」をもとに、最新の許可基準を解説していきます(2020年10月現在)
公務員にも許可されている副業がある
具体的に制限が定められているもの以外の副業は、公務員であっても営利目的でなければ行うことが出来ると言えます。
また、通常は制限されている自営兼業の場合でも、⼀定の規模以上の不動産等賃貸や太陽光電気の販売等の区分に応じて承認を得た場合には、⾏うことができます。
その際の承認基準として、公務員の原則に外れないこと以外に、その事業が相続・遺贈によって家業を継承したものと定められています。
その他、報酬をもらって行う副業、および定期的・継続的に従事する副業は基本的にすべて許可が必要となっています。
またどのような場合でも、あくまでも公務員の原則に乗っ取り従事することが必要です。
実際に許可されている副業の例
実際にどのような副業が許可されているのか具体的に紹介していきます。
【実際に許可されている副業の例】
- 非営利団体での兼業
- 単発的な講師や講演、雑誌等への執筆
- 営利性の乏しい活動
非営利団体での兼業
非営利団体とは、営利企業以外の団体のことを指します。
具体的には国や地方自治体、独立行政法人、公益社団・財団法人、学校法人、社会福祉法人などがそれにあたります。
この非営利団体において、以下の3つの条件にあてはまる場合、許可を得ることで兼業が可能となります
- 自分の職務と利害関係の無い団体であること
- 活動実績があり社会的に問題の無い団体であること
- 団体の責任者として兼業をしないこと
単発的な講師や講演、雑誌等への執筆
職務との利害関係や、公務への影響の無い内容の講演や講師を行った場合、また雑誌等への執筆を行った場合、講演料、原稿料、車代などは報酬に含まれないため受け取ることが出来ます。
許可が不要の場合もありますが、非常に線引きが曖昧のため事前に確認が必要と考えたほうが良いでしょう。
また、執筆活動の中でもアフィリエイトブログや、ライター業の場合は営利活動とみなされる可能性が高いので注意が必要です。
営利性の乏しい活動
公務員は基本的に営利活動を副業として行うことが出来ませんが、以下の活動については営利性が乏しいとして自営兼業とみなされず、許可無しに従事することが出来ます。
- 家賃収入を主とした不動産賃貸業(ただし年収500万円以内)
- 自家消費が主な目的の小規模農業
- 太陽光電気の発売(ただし出力が10キロワット未満)
【最新版】公務員でも出来るおすすめの副業
副業に制限のある公務員でも、問題なく行えて始めやすいおすすめのもの二つ紹介します。
【公務員でも出来るおすすめの副業2つ】
- 不動産投資
- 投資信託・株式投資
不動産投資
先ほど説明した通り、定められた小規模(10室未満のアパート、10台未満の駐車場など)の範囲内であれば不動産の賃貸も許可なしで行うことが出来ます。
ただし、利益を生むことを目的とした不動産の売却は制限の対象となるため注意が必要です。
また、職務への影響が出ないように、不動産の管理を管理会社に委託する必要があります。
公務員は与信が高く、不動産投資の際に金融機関から融資を受けやすいというメリットがあります。
また、管理を委託会社に任せるため本業に影響がありません。
そのため、不動産投資は公務員におすすめの副業と言えるでしょう。
投資信託・株式投資
資産運用そのものは副業の対象にならないため、公務員が行っても問題ありません。
ただし、インサイダー取引という違法行為にならないように、職務上で得た知識をもとにした株の売買は行わないようにしましょう。
また、勤務時間中の株取引は禁止されており、発覚した場合処罰の対象となります。
投資信託は自分で株の売買を行う株式投資と違い、プロに運用そのものを依頼するためリスクが低く、小額から始められます。
まだ投資に不慣れな場合は投資信託から始めるのも良いでしょう。
資産運用にはその他にもFx投資などがありますが、売り時を見極めるために常時為替変動を監視しなければならないため、本業との兼業は難しいとされています。
いずれの場合も実施自体に許可はいりませんが、得た利益は必ず確定申告しなければいけません。
公務員が副業をする時の注意点
公務員が実際に副業を行う際、注意しなければいけないことがあります。
うっかりして懲戒処分の対象となることが無いように事前にしっかり確認をしましょう。
【公務員が副業をする時の注意点2つ】
- 判断に迷ったら上司に相談する
- 副業所得が20万円を超えたら必ず確定申告する
判断に迷ったら上司に相談する
自分がこれから行いたいと考えている副業が、許可が必要なものか、そもそも制限の対象になっているかなど、判断に迷ったときは必ず上司に相談しましょう。
公務員には遵守しなければいけない法律が存在するため、決して自分だけの解釈で副業を行うことはできません。
また、通例上許可はいらない場合でも、のちのトラブルを防ぐためにも行いたい副業について上司や人事に相談をしておくと良い場合もあります。
副業所得が20万円を超えたら必ず確定申告する
給与所得を受けている人が20万円以上の給与以外の所得が生じた場合、必ず確定申告を行わなければいけません。
株式投資で得た売却益や配当は、保有している証券会社の口座で受け取るときに源泉徴収を行うかどうかを設定できます(特定口座)。
もし源泉徴収をしない場合は、他の所得と合わせて20万円を超えた場合に確定申告が必要です。
正しく確定申告を行わない場合は脱税となり、追徴課税として通常より高い税率の金額を支払うことになるのできちんと確定申告を行いましょう。
公務員でも出来る副業で収入を増やしていこう
公務員にも確実に副業解禁の波が訪れており、制限の範囲内であれば可能な副業がたくさんあります。
しかし、あくまでも公務員の本分を忘れてはいけません。
まずは、自分に合った副業を知ることが必要です。
副業に関する情報が満載の物販総合研究所のメールマガジンに登録して副業に関する有益な情報をぜひ入手してください。