副業サービスが充実してきている
これまで副業で活用できるサービスといえば、副収入が得られるタイプのものが一般的でした。
アフィリエイトやクラウドソーシングなどは、馴染みのある人もいるでしょう。
しかし、2019年に入って以降、副業のサービスに新しい動きが見られるようになっています。
具体的には、副業をする個人や副業を解禁する企業をサポートするタイプのサービスです。
例えばクラウド型の会計ソフトで知られる「freee(フリー)」は、副業をする人が困りやすい、確定申告の要・不要の判断や開業届などの書類作成・経理業務を簡単にできるサービスを開始しています。
また、副業解禁後の企業をサポートする「フクスケ」は副業ガイドラインの作成や申請内容のチェックをソフトで運用できるようにしました。
こうした動きは、今後副業への追い風を一層強めることになるかもしれません。
副業を会社に申請する流れ
ここからは、会社で副業の許可を得るまでの主な流れについて見ていきましょう。
就業規則を事前に確認する
副業の申請となると、具体的な申請方法から調べようとする人も多いかもしれませんが、まずは会社の就業規則を確認することが大切です。
社内で副業が解禁されている場合、就業規則に副業のできる条件や申請内容などが記載されていることがあるからです。
制度の整っている企業では、専用のガイドラインが用意されているケースもあります。
そういった内容を事前にチェックすることで、自分が副業を申請できるかどうかという前提情報を得ることができます。
申請内容を確認する人の手間も考えて、最低限のマナーを守っておくのがポイントです。
副業許可申請書を提出する
就業規則やガイドラインを確認して自分の想定する働き方が問題なさそうであれば、会社に申請する段階となります。
一般的には、副業許可申請書に必要事項を記入して、担当者へ提出する流れです。
申請書のフォーマットは会社によって異なるので、指定されているものを使用するようにしましょう。
ただし、副業をすること自体は解禁されていても、申請に関する社内制度が整っているとは限りません。
例えば申請書のフォーマットが決まっていなかったり、許可を得るまでのプロセスが曖昧だったりするケースです。
その場合は、社内のわかる人に相談すると方法を教えてもらえることがあります。
申請書の前に口頭で相談してほしいという企業もあるので、臨機応変に行動するようにしましょう。
会社の審査を受ける
副業の申請書を提出するところまで済んだら、後は会社の審査を待つことになります。
企業によって審査の内容や厳しさは異なるので、判断が下るまでにかかる時間もケースバイケースです。
例えば担当者の会議でじっくり話し合いが行われる場合は、それなりの時間が必要となります。
一方、申請書に問題がなければ、許可するというスタンスの会社であれば、すぐにスタートできる環境が整うかもしれません。
気になる人は申請書を提出する時点で、審査にかかる目安時間を聞いてみると良いでしょう。
審査を経て最終的に許可が下りれば、ルールの範囲内で堂々と副業ができるようになります。
副業の申請書に書く内容は?
副業の申請書は、履歴書などのように豊富な記入例がまだ手に入りにくいので、具体的に何を記載するのか気になる人もいるのではないでしょうか?
ここからは、一般的に記入が求められる項目について紹介します。
副業に関する情報
副業の申請では、「どんな副業をするのか?」という情報が求められます。
申請書のフォーマットにもよりますが、雇用型・個人事業主型といった働き方の違いで記載内容も異なる傾向があります。
雇用型は、アルバイトなど、他社に雇用される形で副業をするスタイルを指します。
この場合、就業先の情報が必須となるでしょう。
例えば以下のような情報です。
- 就業する会社名
- 雇用形態
- 業務内容
- 勤務時間
- 勤務期間
一方、在宅ワークといった雇用関係のない形で働く場合は、個人事業主型に分類されます。
他社に勤務するわけではないので、業務内容や取引先に関する情報が主要な記載事項です。
なお、個人事業主型での仕事は、雇用型に比べて副業にあてる時間管理が難しいという特徴があります。
そのため副業をする時間や期間については、細かい記入が求められることもあるかもしれません。
副業をする理由
副業の申請書には、副業をする理由についても記載する欄があるのが一般的です。
しかし、業務内容などは指示に従って書けても、理由の書き方について悩む人もいるのではないでしょうか?
気をつけておきたいのは、
- 「収入を増やしたいから」
- 「生活費が足りないから」
といった理由は、避けるという点です。
会社の給料に不満があるかのようなイメージを与えてしまうため、控えた方が賢明でしょう。
もし記載理由に悩む場合は、次の二つの方向性を活用すると、スムーズに書けるかもしれません。
一つは、どうしてもお金が必要となる理由を伝えるやり方です。
例えば子供の養育費や、親の介護費用に充てるため、といったものが有効だと考えられます。
もう一つは、本業にプラスの影響を与えることをアピールする方法です。
別の分野の知見を得て、視野を広げたいなどの理由であれば、悪い印象を与えるのを避けられます。
ちなみに、通常は副業によって本業に支障を出さない点を誓約する欄もあるので、記載漏れがないようにしましょう。
副業の許可が下りないケース
実際に副業を申請するときは、「許可が下りなかったらどうしよう」と不安になる人もいるかもしれません。
ここでは、副業が許可されない代表的なケースについて解説します。
本業に支障が出る場合
副業は厚生労働省が主導で推進しているので、そこから提供されている「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が許可・不許可の判断材料となることがよくあります。
例えば本業に支障が出る場合というのが、副業禁止となる理由の一つです。
副業をすることで過労状態となる可能性があると、本業の業務に悪影響が出ることを懸念され、許可を得るのが難しくなるでしょう。
具体的には、申請書に深夜に働く予定を書いていたり、休日を全て副業にあてることを希望したりすると、過労を不安視されてしまいます。
無理な働き方は健康にも良くないので、働きすぎだと判断されるような勤務時間や勤務期間にならないよう、スケジューリングに気を配るのがポイントです。
情報漏えいが心配される場合
世の中の企業は、外部に漏れてはならない機密情報を扱っているのが一般的です。
顧客データはもちろん、会社・社員の情報や社内教育によって身につけたノウハウなども機密情報に当てはまります。
そういった内容が副業によって漏えいするかもしれないと懸念された場合も、許可が下りにくい傾向があります。
本業で得た知識や経験を活用して別の分野で働く場合は、その点に注意する必要があるでしょう。
基本的に社内にいなければ知ることができない情報は、副業で扱うのは危険と考えておくことが重要です。
もちろん本業で得た人脈を頼りに活動することもできません。
会社の信用を損なう可能性がある場合
副業申請の審査では、希望する副業が会社の信頼低下につながらないかという点も重視されます。
企業としての信頼が損なわれてしまうと、業績が落ち込む可能性が出てくるからです。
特に公序良俗に反するような仕事には厳しいので、業務内容はよく検討しましょう。
公序良俗とは、「公の秩序・善良の風俗」の略で、簡単にいうと社会的に広く受け入れられている常識のようなものと解釈します。
例えば水商売やネットワークビジネスなどの職種は、好印象を持たれにくく、副業として認められることは少ないと考えて差し支えありません。
スムーズに許可を得るには、誰にでも堂々と言える職種を選ぶことが大切です。
競業にあたる仕事である場合
副業では、競業(いわゆる同業他社)で働くことも許可されないと考えておきましょう。
もし企業秘密が競業に流出してしまえば、本業で勤める会社の力が弱まってしまうかもしれないからです。
すでに述べたとおり、副業では、競業の職種を避けていても情報漏えいには厳しいため、競業となれば、なおさら難しくなります。
例えばエンジニアが本業の勤め先と同じようなシステムを構築する仕事を請け負った場合がわかりやすいでしょう。
似たシステムがリリースされれば、どちらかに大損害が出ることもあり得るので、非常に危険です。
あくまでも本業とは距離を置いて活動するのが安全策となります。
副業を申請するときの注意点
副業の申請は、自分の希望する働き方を実現する第一歩として重要なステップです。
副業について特に注意しておきたいポイントについても確認しておきましょう。
無許可で副業をしない
せっかく副業が認められた環境で働いているのであれば、申請手続きをして許可を得た上で副業をすることが大切です。
初めて申請をするときは申請方法がわからなかったり、申請手続きを面倒に感じたりすることもあるかもしれません。
しかし、許可なく副業をするのは「バレたらどうしよう」という不安を自分から抱えに行くようなものです。
もし実際にバレてしまえば、何らかの処分を覚悟しなければならないこともあるでしょう。
本格的に取り組むかどうかはわからないとしても、ルールとして決められている以上は社会人としてマナーを守るのが基本姿勢です。
(関連)副業はバレない?バレる原因&対策と会社にバレない副業まとめ
申請書にうそを書かない
副業をしたい理由は人によってさまざまですが、許可を得たいばかりに申請書にうその内容を記入するのはルール違反です。
例えば労働時間を実際よりも短く書いたり、副業をする理由を作り込みすぎたりするのは得策とはいえません。
というのも、副業を続けるうちにうっかり同僚に本当のことを話してしまったり、稼ぎを自慢したりして、うそがばれてしまうのがありがちだからです。
特に会社の飲み会などでは、口が滑りやすくなるのではないでしょうか?
最悪の場合は、副業の継続を禁止されてしまうケースもあるので、あくまでも誠実に申請書を作成するようにしましょう。
本業に悪影響を出さない
副業申請で許可を得た後は、決められた範囲内で活動するように心がけておく必要があります。
特に在宅ワークの場合は、知らずのうちに労働時間が長くなることもあるので注意しましょう。
もし本業の仕事に悪影響が出てしまうと、副業を続けるのが難しくなるかもしれません。
自分の希望する働き方を追求しすぎて一緒に働く人たちに迷惑をかけないよう、時間や仕事量をコントロールする意識が大切です。
最初はうまくバランスを取るのが難しいと感じることもあるかもしれませんが、少しずつ習慣化してくれば、うまく対処できるようになります。
公務員も副業に意欲的な時代へ
ここまで民間企業の副業申請について解説してきましたが、公務員の副業事情はどうなっているのでしょうか?
一般的に公務員が副業をするのは厳しいという見方が強いですが、近年は一定の条件の下で許可されるケースも出てきています。
これは人口減少などの課題を背景に、公務員にも従来よりも広い範囲で地域社会に貢献することが求められているのが理由の一つです。
ちなみに、公務員の場合は副業ではなく、「兼業」という言葉を使うケースが目立ちます。
地方自治体の具体的な取り組みのなかでは、神戸市の「地域貢献応援制度」が代表例でしょう。
地域貢献応援制度とは、神戸市で働く地方公務員が許可を得て兼業に取り組めるようにした新しい仕組みのことです。
この制度では、任命権者(企業でいう上長)の許可を得れば、地域活動に関連する業務に携わることが可能となります。
また、奈良県の生駒市でも同じような取り組みが行われるようになりました。
民間企業の会社員と比べると、副業の職務内容に節度が求められる傾向はあるものの、今後は公務員の兼業も広がっていくかもしれません。
(関連)社会人が夜や土日にできる副業ってどのようなものがあるの?
副業は会社に申請して堂々と取り組もう
業解禁の流れは広がってきてはいるものの、実際に柔軟な働き方を認めている企業はまだ少数派という現実もあります。
やりたい副業があり、せっかく社内でも制度として認められているのであれば、申請をしてみてはいかがでしょうか?
会社から許可を得ることで堂々と副業に取り組める上に、内容によっては本業に良い影響もあるかもしれません。