帳簿の必要性を知ろう
まず、せどりにおいてなぜ帳簿が必要なのかについて理解することが大切です。
そもそも、帳簿とはビジネスにおけるお金の流れを管理し記録として残しておくためのものを指します。
「せどりは会社を構えて行うビジネスではないから帳簿は必要ない」という考えは、大きな誤りです。
なぜなら、せどりも小売業の一つであるため、帳簿をつけることが法律で義務化されているからです。
これは、確定申告の際に白色申告をするか青色申告をするかで変わるものではありません。
少し前までは、所得の合計金額300万円以下の白色申告の場合は帳簿をつける義務はありませんでした。
しかし、その後法律が改正され、白色申告であっても簡易帳簿で記帳し最低5年間は保存することが義務付けられたのです。
帳簿をつけておかないと、税務署から調査が入った際に追徴課税がされてしまいます。
また、帳簿の必要性は、法律で決まっているからという理由だけではありません。
どのようなビジネスにおいても、細かく帳簿でお金の管理を分かりやすくしておけば、売上増加にもつながるとされているのです。
帳簿をつけるべき3つの理由
帳簿をつけるべき理由についても把握しておくことが重要です。
以下で、3つの理由について説明します。
理由1:利益を把握するため
せどりを行うためには、仕入れのための資金を準備しておく必要があります。
そして、資金繰りを円滑に行うためには、現状でどれくらいの利益が出ているかを把握することが欠かせないのです。
正確な利益の額は、日々のお金の管理をしっかりやっておかないと見えてきません。
しかし、せどりは「安く仕入れて高く売る」というシンプルなやり方なので、帳簿などつけずに「なんとなくこれくらい」など大まかな額でしか利益を把握していない人が多いのです。
お金の流れを正確に把握していないと、利益が上がらないどころか、知らない間に赤字になっている場合もあります。
帳簿をつける手間を面倒だと思い放置してしまったがために、せっかく商品が売れても赤字になっては元も子もありません。
帳簿をつける際は、売上の他にも仕入れ額、売値、手数料・経費といった項目に分けてきちんと管理しておくようにしましょう。
こうすることで、お金の流れが目に見えて明確に分かり、利益額を把握しやすくなります。
これらの管理は商品ごとに行うのはもちろんのこと、月単位で管理していくことも利益につなげるための重要なポイントです。
理由2:在庫を管理するため
在庫が手元にどれくらいあるのかを正確に把握することも、せどりで利益を上げるためには欠かせません。
在庫について管理しておけば、現状で抱えている在庫分の金額も明確になります。
そして、在庫全体の金額が正確に分かれば、せどりでの利益額を予想しやすくなるのです。
せどりに慣れてくると、たとえば、「在庫が50万円分あるから今月はおそらく15万円くらいの利益が出るだろう」などという予想ができるようになってきます。
言い換えれば、月15万円の利益を出したければ、常に50万円分の在庫をストックしておけばよいということが分かるのです。
また、在庫管理をきちんとしておけば、各商品の仕入れ時期についても判断しやすくなります。
自身がストックしている中で売れ筋の商品は少し多めに仕入れたり、反対に、ストックに余裕がある商品を余計に仕入れないようにしたりするなどの管理がスムーズになるでしょう。
さらに、在庫管理はAmazonのFBAサービスを利用する場合も重要になってきます。
FBAサービスでは、出品したはずの商品がなくなっているといったことがまれに起こります。
その場合、商品がなくなったことをAmazonに通知しなければなりません。
仮にAmazon側の過失により紛失した場合は、補償を受けることができます。
しかし、ここでもし在庫管理を怠っていると、商品がなくなっていることにさえ気づかずに損をしてしまいかねないのです。
このことからも、在庫管理は常日頃からしっかりするよう心がけましょう。
理由3:確定申告のため
せどりの売上で得た利益も確定申告の対象になります。
よって、正確な数字で申告をするためにもきちんと帳簿をつけ、売上管理をしておく必要があるのです。
確定申告をしなかったり、正確でない数字を申告してしまったりすると、何十万円もの追徴課税がかかることもあります。
忘れずに帳簿をつけ、確定申告するようにしましょう。
せどりの場合、「仕入れ」は経費として計上することができます。
もっとも、1~12月の決算時期を超えて在庫を保有した場合は経費として計上されず、利益額が多くなり納税額も高くなる可能性があるので注意が必要です。
たとえば、年間の売上が500万円、仕入れにかかった経費が200万円、決算期末の在庫が100万円だったとします。
この場合、利益額の計算方法として500万円(売上)-200万円(支出)=300万円(利益)というのは誤りです。
正しくは、200万円(経費)から決算期末繰り越し分の100万円を引いた残りの100万円を支出として計算しなければなりません。
よって、500万円(売上)-100万円(支出)=400万円(利益)となります。
ここできちんと在庫管理をしていないばかりに計算を誤り、少ない利益額のほうを申告してしまうと、追徴課税を取られてしまいます。
自分で細かく計算するのが難しい場合は税理士に依頼するとよいでしょう。
もっとも、税理士に頼むにしても、帳簿をつけていないと計算そのものが出来ません。
このことからも、帳簿はきちんと準備しておくことが必要なのです。
帳簿をつけるメリット・デメリット
帳簿をつけることのメリットとデメリットを紹介します。
帳簿管理の性格や特徴を押さえていきましょう。
帳簿をつけるメリット
まず、せどりの全体的な売上やお金の流れなどの実態が分かるというメリットがあります。
常にせどりの全体像を把握しておけば、確定申告や決算といったいざというときにスムーズな処理が可能です。
また、全体像が分かっていれば、イレギュラーなことが起きた場合でも軌道修正がしやすくなります。
次に、仕入れの原価を見直しやすくなる点もメリットです。
せどりで利益を上げるためには、仕入れ値を少しでも下げることが大切です。
各商品の仕入れ値を把握していれば、どの商品をどれだけ安く仕入れるか対策を立てやすくなるでしょう。
同様に、仕入れる必要がない商品を洗い出すことにも役立ちます。
ただ何となく「人気ジャンルの商品だから」と仕入れていたものでも、もしかしたら仕入れ値が高く利益にあまり結びついていないかもしれません。
そういったものを洗い出し、浮いた仕入れ値分の額を別の商品の仕入れなどに使ったほうが、効率よく利益を上げられます。
さらに、帳簿をつけることで売れ筋商品が分かりやすくなるのもメリットです。
なんとなく「これが売れたな」という感覚だけでなく、正確な数字に引き直してみると、たった数パーセントでも商品ごとの差が分かって役立ちます。
数パーセントの差であっても、利益額に還元すると大きな違いが出てくるものです。
この差を意識しながら売れ筋商品を仕入れることも利益を上げるための重要なテクニックになります。
こういったことに慣れてくると、仕入れの際に「すぐに売れる商品」や「儲かりやすい商品」の予想ができるなど、仕入れの力が身についてくるでしょう。
帳簿をつけるデメリット
帳簿をつけることの最大のデメリットは、やはり入力の手間がかかることでしょう。
特に、仕入れた商品の数が多ければ多いほど、帳簿管理も時間がかかります。
また、帳簿をつける際には経費など項目ごとに細かく分けて管理しなければならないため、自分で帳簿をつけようとしてもどのような項目が必要なのか分からないということもあるでしょう。
このようなデメリットがあるため、帳簿をつけることをあきらめてしまったり、始めたもののおっくうになり途中でやめてしまったりする可能性もあります。
しかし、帳簿はつける義務があるものです。
同時に、つけることによるメリットのほうがデメリットを上回ります。面倒でも帳簿はきちんとつけるようにしましょう。
たしかに、帳簿管理は手間がかかりますが、やり方によってはスムーズに管理できる可能性があります。
また、最初は大変でも慣れてくるとだんだん楽に管理できるようになるでしょう。
帳簿をつける方法とは?
帳簿のつけ方にはいくつかの種類があります。
まず、手書きで帳簿をつける方法です。パソコンが苦手という人でもすぐに始められるメリットがあります。
また、思い立ったときや出先などでもサッとメモできるのも利点でしょう。
もっとも、せどりの期間や数が増えてくると、パソコンで管理したほうが見やすいという面もあります。
手書きをするのはメモ程度にし、後でパソコンのソフトやツールに落とし込むとよいでしょう。
パソコンで帳簿をつける方法の一つに、エクセルがあります。
エクセルは、一度ベースとなるフォーマットを作ってしまえば、数字を入れるだけで自動で計算してくれるので便利です。
並べ替えやフィルター機能を使って、日別や月別の売上を比較したり、特定の期間のお金の流れを表示できたりする機能もあります。
エクセルの他に、スプレッドシートを使って管理することもできます。
エクセルと同じく、数字を入力するだけで簡単に管理ができるうえ、外出先でも更新しやすい点がメリットです。
エクセルだと、そのファイルが入っているパソコンやUSBメモリを破損したり紛失したりするとデータが見られなくなるおそれがありますが、スプレッドシートであれば、ネット上での共有になるのでデータ紛失のおそれなく更新できます。
売上管理専用のツールを使うのも便利な方法です。
専用ツールは、自分でフォーマットを作る必要がなく、単に入力をするだけできちんと管理ができます。
基本的に、どの方法によっても管理は可能なので、自分に合った方法で始めてみるとよいでしょう。
帳簿管理で必要なこと
帳簿管理は、ただ数字だけ記録しておけばいいというものではありません。
まず、せどりで使った領収書やレシート、請求書、納品書などは全て保管しておきましょう。
ノートに貼って保管しておくとバラバラになる心配がないので安心です。
5年の保管義務がありますが、長期間保管しておくとレシートなどは印字が消えて内容が判別できなくなる可能性があります。
よって、ノートに貼り付けたら、あらかじめそのページごとコピーをとっておくと安心でしょう。
また、確定申告を正確に行うために、経費の種類について知識を持っておくことも大切です。
まずは、雑費と消耗品費の違い、接待交際費、旅費交通費の項目について押さえておきましょう。
消耗品費とは、「1個あたり10万円未満、または、使用期間が1年未満の費用」をいいます。
たとえば、梱包材などを買ったときの費用は消耗品です。
一方で、雑費は「領収書を必要としない少額の費用」をいいます。
たとえば、コンビニでのコピー代などが該当します。
接待交際費は、一人だけで行った飲食は経費とはならないので注意が必要です。
領収書の裏面に、何人で飲食をしたのかメモしておくようにしましょう。
旅費交通費は、セミナーや研修で使った交通費や宿泊費など「事業に直接関係すること」であれば経費として認められます。
もし、どの費用が経費として認められるか判断がつかないときは、税務署に積極的に聞きに行くようにしましょう。
帳簿管理のポイントとは?
帳簿管理は、いくつかのポイントを押さえたうえで行うと管理しやすくなります。
まずは、仕入れた商品について商品名や仕入れ日、仕入れ先、仕入れ値などの項目ごとに正確に記録するようにしましょう。
これを最初にきちんとやっておくと、後の帳簿管理がスムーズにいくようになります。
商品が売れたら、売上高や利益率、持ち越しになる売上まで細かく記録しましょう。
また、売上だけでなく支払いについても管理を忘れてはいけません。
カードごとに、締め日や引き落とし日、限度額などを管理しておきましょう。
これらを怠らずに続けることで、お金の流れが具体的にイメージしやすくなります。
商品を仕入れたときや商品が売れたとき、経費が生じたときに、その都度こまめに記録するよう習慣づけることもポイントです。
1カ月ごとに全体的なお金の流れを集計すると、管理がしやすくなるうえ、改善点なども見つけやすくなります。
自分に合った方法で帳簿をつけよう!
帳簿管理は、せどりをしていくうえでの義務であり、とても重要な業務の一つです。
面倒だからといっていい加減な管理をしていると、確定申告で正確な数字を提出できず追徴課税を取られてしまいます。
また、帳簿管理をきちんとしていたほうが、せどりの収益アップにつながりやすいでしょう。
もし、分からないことがあれば税務署に聞くのも方法の一つです。
自分に合った帳簿管理方法を探してみて、利益の拡大をめざしましょう。