せどりで法人化するときのタイミングは?
せどりが順調に利益を上げてある程度の収入があるなら、青色申告よりもさらに節税で有利になる法人化を検討する人もいるでしょう。
ここからは、せどりを事業として法人化するときのタイミングやポイントを紹介します。
せどりで法人化するためのタイミングやステップ
法人化とは単に会社を設立することではありません。
もともと行っていたせどりを法人化するということは、新規に会社を立ち上げるのではなく、せどりを事業として会社組織で引き続き行っていくことを意味します。
法人化することを法人成りとも呼びます。
法人化もしくは法人成りすることは、新規に会社を設立することとは意味合いが異なるのです。
せどりを法人化するには、以下のステップがあります。
法人化するためには、法務局に法人登記する必要があります。
会社を設立する旨、管轄の法務局に所定の用紙に必要事項を記入して届けを出して正式に認められなければなりません。
この一連の手続きが、このような事務処理に不慣れだとなかなか厄介なのです。
といっても、以下に説明するステップに沿って準備すれば、行政書士や司法書士などの専門家に依頼しなくても、法人化のための時間さえ取れれば個人で届け出て法人化することは難しくありません。
まずは、登記する際には会社印が必要になります。
法人として法務局で必要になるのは、会社の実印です。
これが登記印になります。
会社名と代表者名が彫られた丸い形の印鑑で代表者印とも呼ばれます。
厳密には他にも角印や銀行印などが必要になりますが、差し当たって代表者印を第一に作りましょう。
準備の際に必要になる「登記申請書」に記入することになる商号、目的、設立日などの設立項目のひとつひとつについて検討して決定しておきます。
次に、会社を経営する上で必要な事柄を定めたルールブックとなる「定款」を作成して認証してもらわなければなりません。
定款は、データとして作成する電子定款か手書きや印刷で作成した書類の定款でも構いません。
完成した定款は、会社の所在地を管轄する公証役場で公証人の認証を受けるための手続きが必要です。
これにより定款が公的に正式な書類として認められたことになります。
記載すべき次項をしっかりと確認し、決められた書式や記載のルールを守って作成しなければなりません。
会社の法人用銀行口座を開設し、本口座へ会社の資本金の振込と証拠となるコピーが必要です。
他にも各種申請書を作成し登記に必要な書類を漏れなく準備します。
全ての書類が整ったら会社の所在地を管轄する法務局で設立登記の申請を行います。
無事に法人登記が認められ会社が設立されたら、登記事項の証明書となる登記簿謄本を取得しておきましょう。
税務署や都道府県税事務所、自治体などに会社設立の届け出を提出する際や、法人の銀行口座を開設する際に必要になります。
並びに印鑑証明書が必要になる場面も多いため、同時に取得しておくと安心です。
法人登記して会社の設立が無事に完了したら、いよいよ会社としての運営がスタートします。
必要に応じて創業時の助成金や融資の申請を行い、せどりの事業を軌道に乗せられるよう努力しましょう。
せどりで法人化したら業務を外注化するのも良い
法人として会社組織で運営していることが分かれば、世間の信用も得やすくなります。
仕入れリサーチ代行や購入代行、商品の納品や経理などの事務処理など、せどりに関わる一連の業務を外注化することも可能になるでしょう。
クラウドワークスやランサーズなどのクラウドソーシングサービスやアウトソーシングサービスを利用すればスムーズに依頼することができます。
社屋や事務所となる設備があれば、バイトを雇い入れることも有効です。
売上が安定すれば従業員を直接雇うことも視野に入れましょう。
事務所で仕事をしてもらうことで、コストが下がり継続して仕事をこなすことでスキルアップにも繋がります。
その代わり、経営者は自分にしかできない業務を一手に引き受けてこなさなければなりません。
売れ筋商品やトレンドの調査や仕入れ、販路開拓、仕入れ先開拓などを行うことにより、会社の利益の拡大が期待できます。
せどりで起業し法人化する時の売り上げの目安
せどりで起業する際は、注意点として意識したいポイントがいくつかあります。
まずは、法人化する目安の売上額についてです。
仕入れから販売までなるべく回転率の良い商材で月々の売上が500万円、利益100万円を基準として法人化を検討するのが妥当でしょう。
これらの売上が安定して継続すれば、帳簿上の利益はあるのに現金支払いができない黒字倒産を避けることができます。
安定した売上を出し続けるには、当面は人件費や家賃などの固定費はなるべく節約する必要があります。
キャッシュフローのアウトとインを意識し、利益を貯め込まず仕入れや投資などに回して売上につなげる工夫をすることが重要です。
特に、自分ひとりで全ての業務をこなす人は、まずは自分の健康管理を徹底させましょう。
身体が不調だと多くはメンタルにも弊害を及ぼすものです。
仕入れができなくなれば、即売上低下に直結してしまいます。
法人設立するメリット
法人化するメリットは、一個人ではなく会社としての社会的信用を得られることです。
つまり、卸会社やメーカーとの契約も通りやすくなることを意味します。
今までよりも質の高い商品の仕入れが可能になれば、売上の安定化にも繋がりやすくなるのです。
また、会社組織にすれば自分が社長となり役員報酬が計上できます。
また、家族や親族を役員として登記すれば、その分の役員報酬も合わせて必要経費として計上することも可能です。
個人事業主として所得税を納める場合は、累進課税制度上、所得が増えれば税率も上昇するため税負担も大きくなってしまいます。
しかし、会社として納める法人税は一定の税率のため、利益が増えた場合でも納税が負担に感じることはありません。
節税を考える分岐点としては、年間所得が400万円を超えたら法人化を検討する目安と言えます。
さらに、法人化すれば一個人よりも資金調達の面でメリットが多くなります。
法人として損益計算書や貸借対照表で財産管理が明確化するため、融資する側の金融機関も会社の経営状況が明確に判断できるため、適正な金額の資金調達が広く行えるようになるのです。
法人設立をするデメリット
法人化するメリットは大きいですが、反面デメリットとなる点もあることに注意が必要です。
一般的に考えられるデメリットは以下のとおりです。
まずは、法人化のための登記申請のために設立費用がかかることが挙げられます。
費用の名目は、会社設立の資本金や登録免許税、定款認証手数料や印紙代などです。
また、法人としてせどり事業を行う際の古物商の許可申請も新たに再取得する必要があります。
証紙代や許可申請代行費用などもかかってくるでしょう。
それぞれ必要書類の発行手数料なども少額ですがその都度一通取得するごとにかかります。
会社組織となったからには、社会保険へも加入する必要があります。
たとえ、社員が不在で社長1人だけの会社でも、健康保険と厚生年金保険、介護保険などの社会保険への加入が義務付けられているのです。
個人事業主として国民健康保険や国民年金保険として支払っていた額よりも高額になることがほとんどです。
従業員へは会社が半額負担することになるため、その分の出費は避けられません。
会社経営する場合は、どんぶり勘定ではなく詳細で厳密なルールに則った会計や税務処理、社会保険料や雇用保険料の計算などをしなければなりません。
生半可な簿記の知識では手に負えない面も出てくるため、税理士や公認会計士、社会保険労務士などの専門家に依頼することになるでしょう。
それらの事務処理の煩わしさが増えるとともに、専門家への報酬や外注費も発生することになります。
また、意外に思われるかもしれませんが、自分が社長となって設立した会社であっても、会社のお金は自分の私費として自由に使うことはできません。
法人化して会社を設立すると、会社の財産と個人の財産は明確に区分する必要があります。
たとえ社長でも、会社のお金を自分の私用のために使うことは一切できないのです。
せどりで起業するときに必要な確定申告のポイント
日本に国籍を持つ日本国民は、日本国憲法において納税の義務が定められています。
これは、せどりの収益に限らず、ある一定の要件を満たす利益を得た人は、所得税を納めなければなりません。
税務署へ正しく所得を申告して、納めるべき正しい税額を算出して納税すること、これを「確定申告」と言います。
これらが正しく行われているかどうかは税務調査によって確認されます。
脱税や無申告が発覚した有名人がニュースで世間を騒がせたことは記憶に新しいでしょう。
有名人に限らずとも、正しく納税が行われていないことが発覚した場合、追徴課税という形で本来よりも多額の罰則金を上乗せした税金を納めることになります。
「知らなかった」では許してくれるものではないため、事前にきちんと対策を立てて臨みたいものです。
といっても、確定申告自体は、収支をきちんと管理してさえおけば誰にでもできる簡単な制度です。
せどりを副業として行う場合と、起業して法人化した場合とでは、納税の仕組みも納税額も異なります。
どちらの方法がベストなのかは利益や家庭状況などにより変化するでしょう。
まずは、起業する際に必要になる確定申告のルールについて、概要を以下に説明します。
確定申告のルール
確定申告が必要な人についてはいくつかのルールが設けられています。
一般の個人がせどりを行う際に関わってくるのが「20万円ルール」でしょう。
副業としてせどりで利益を得た人が確定申告を行う必要があるのは、所得が20万円を超えた場合です。
つまり、副業の所得が20万円以下の場合は確定申告を行う必要がありません。
そもそも所得税が発生する最低基準額に達しない非課税限度内となるからです。
ここで気をつけたいのは「20万円の所得」というキーワードです。
この場合、「20万円の収入」ということではありません。
どういうことかと言うと、20万円は副業のせどりで得た売上金額ではないのです。
混同されることが多い言葉ですが、「所得」と「収入」は同じ金額にはなり得ません。
というのも、「所得とは、収入金額から必要経費を差し引いた金額」を指すからです。
必要経費とは、せどりの収入を得るために支払った雑費、消耗品、ガソリン代、光熱費などがあります。
つまり、売り上げた収入金額からこれらの必要経費を差し引いたあとの所得が20万円を超えているなら確定申告が必要ということになります。
しかし、人によっては副業の所得が20万円以下でも確定申告をしたほうが都合が良いケースもあるのです。
正しくは還付申告と言いますが、住宅ローン控除や株の配当控除、寄附金控除が受けられる人、年間に10万円以上の医療費を支払った人などは、既に納めた税金の一部または全額が戻ってくる可能性があります。
特に、災害や盗難などで損害を受けた人は雑損控除が適用されるため減税が可能です。
また、青色申告という方法に限定されますが、せどりが赤字だった場合、繰越損失として3年間にわたり減税を受けられる権利が発生します。
収入が不安定なせどりの場合、これは大きなメリットと言えます。
20万円ルールはあくまでもせどりを副業にしている場合に適用されるルールです。
せどりを専業にしている場合は、個人事業主として所得が38万円を超える場合は確定申告が必要です。
確定申告を行わないデメリット
制度がよくわからない、面倒くさい、何か言われたらその時点で払えばいい、などの理由で確定申告を疎かにしていると後々不利益を被ることがあります。
上の項でも説明したように、損失が発生したとしても確定申告をしなければ納税金額を減らせません。
確定申告さえしておけば、赤字が出たときに納税金額を減らすことができるのです。
もし、確定申告を行う必要があるにもかかわらず、何もせず放置していた場合は、納税義務違反となり罰則を受ける可能性があります。
自分にはその気がなくても、脱税と受け取られかねないのです。
罰則として、無申告加算税や延滞税を支払うことになります。
つまり、正しく確定申告をして適正金額の税金を納めるよりも多くお金を支払うことになるわけです。
下手をすると前科がつく可能性も無きにしもあらず。このようなリスクを冒してまでせどりを続けることは疑問です。
なぜなら、正しく確定申告をして経費を計上すれば収入から差し引かれた所得に対して課税されます。
きちんと領収書やレシートなどの証憑書類を保存しておくことにより経費として計上した金額に信憑性があるわけです。
しかし、無申告であとから違反を指摘された場合、そもそも手元に経費の証憑書類となる書類の管理ができていなければ、本来納める税金よりもかなり高額の税金を納めることになります。
その税額を元にして追徴課税されることを思えば、さらに重い負担となるわけです。
せどりで確定申告をするときのポイント
せどりの売上を確定申告するときは、以下のようなポイントがあります。
まずは、青色申告がおすすめということです。
確定申告の方法には2種類あり、便宜的に青色申告、白色申告と呼び分けています。
端的に説明すると、それぞれ収入と支出の帳簿の記録方法が異なります。
会計や経理などの簿記の経験がある人にはピンとくるかもしれませんが、専門的に言うと複式簿記と単式簿記の違いということになります。
つまり、より詳しく正確に記録するのが青色申告、簡易的に記録するのが白色申告と捉えると良いでしょう。
青色申告と白色申告は、どちらの方法にも一長一短あり、自分の状況を鑑みてどちらを選ぶかは個人の自由です。
しかし、せどりに関して言えば、青色申告のほうが何かとメリットを享受できる点が多いです。
まずは、青色申告のほうが青色申告特別控除などの税法上の特典が大きいということ。
これはすなわち、納税額を節税できるということを意味します。
他にも支払いすぎた税金が還付申告によって戻る可能性もあるため、節税とコストを抑える意味でも、せどりをしている人は青色申告で確定申告をしているケースが多いです。
確定申告は、毎年2月中旬から3月中旬の間に前年の1月1日から12月31日までの所得を、税務署や出張所、臨時の確定申告コーナーなどで受け付けています。
インターネットからでもe-taxを利用して確定申告の手続きが可能です。
青色確定申告をしよう
せどりを行う人が確定申告する際は、青色申告か白色申告かを選ぶことができます。
白色申告の場合は事前手続きの必要はありませんが、青色申告の場合は事前に届け出が必要になります。
届け出は、確定申告を行いたい年の3月15日までに、納税地の税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出して審査のうえ承認されれば青色申告が可能です。
審査には数日要するため、早めに持参なり郵送なりして提出する必要があります。
青色申告は、複式簿記による帳簿の記帳を行わなければなりません。
基本的な簿記の知識が必要になりますが、専用の会計ソフトを使用すれば簡単に帳簿の記帳や管理が可能です。
青色申告を行う際に必要な書類は、「青色申告決算書」と「確定申告書B」です。
青色申告決算書を作成するに当たって、複式簿記による帳簿の他、貸借対照表、損益計算書などがあればスムーズに進むでしょう。
不明な点があれば、税務署で親切に指導してもらえます。
確定申告シーズンになると確定申告相談コーナーなどの特別窓口などが設けられるため、積極的に利用してみると良いでしょう。
しかし、タイミングや場所により混雑することがあるため、できるだけ確定申告の繁忙期を避け、直接担当者の話しを聞きながらその場で質問して作成するのがおすすめです。
青色申告を利用することにより、最高65万円の特別控除、もしくは10万円の控除が受けられるため、個人事業主にとってかなりのメリットを享受することができます。
確定申告をするための流れ
確定申告の手順は以下のとおりです。
会計ソフトを用意します。
青色申告に特化したものや企業の経理部門で使用するソフトなど安価なものから高価なものまで多彩な種類があります。
これらの会計ソフトを使用すれば、売上や口座の資金移動、領収書やレシートなどの内訳を勘定科目(費目の分類)と一緒に入力するだけで、自動的に損益計算書や貸借対照表が作成できます。
簿記の知識があれば、手計算でもエクセルなどの表計算ソフトを使用して算出しても良いでしょう。
1年間の収支を入力できたら所得を計算します。
先程も説明したように所得とは収入から必要経費を差し引いた金額のことです。
必要経費は、仕入れにかかった費用や材料費、光熱費、通信費などです。
売上額から経費を差し引いて残った金額が所得となります。
そうして計算された所得から、さらに控除分を差し引きます。
控除とは、会社員が年末調整で控除される基礎控除や配偶者控除などと同様のものです。
事業を行ううえで欠かせない支出は経費として差し引きました。
同じような意味で、生活するうえで欠かせない生活費は基礎控除として、配偶者や家族がいるなら配偶者控除や扶養控除として、一定の決められた額の所得控除が受けられます。
他にも、課税対象から外される社会保険料控除や寄附金控除などさまざまな種類の控除があります。
該当する場合は、しっかりと申告書に記入しておくことが大切です。
所得から税額控除を差し引いた金額が「課税対象額」となります。
この課税対象額を基準として所得税額と復興特別所得税額が確定します。
そうして出た納税額を、3月15日までに支払うことになるわけです。
自身の収益を考慮したうえで起業してみよう
副業解禁の時代を迎え、さまざまな副業を模索して「せどり」にたどり着いた人も少なくありません。
大きなビジネスチャンスを秘めているせどりで起業しようと考える人もいるでしょう。
しかし、起業する際には、コストと時間がかかることを十分に考慮し慎重に進める必要があります。
自身の収益が起業するのに十分であるかを熟慮したうえで、無理のない起業計画を立てましょう。